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  • 保田 厚子

コラム|大人も通える保健室。


なぜ「保健室」なのか。これはわたしのティーン時代のエピソードが関係しています。​

ティーンのわたしはある時期クラスの仲間となじめなくて、かといって学校に行かないわけにもいかず悶々とした日々を送っていました。それであるとき保健室にサボりに行くと、先生が「どうしたの?」というので、「ちょっと生理痛で..」とか何とか適当なことを言って時間を過ごしました。その後も「生理痛で..」「頭痛で..」としばらく通っていたのですが、さすがに毎日は行き過ぎだろうと控えていました。でもやっぱりある日どうしてもムリと思って保健室に行ったら先生がまた「どうしたの?」と聞くもんだから、「いつも同じ理由はマズい」と思い、とっさに「熱があると思う」と答えてしまったわけです。でもすぐに「しまった」と思いました。だって熱を計ってしまえば平熱ですから、わたしは「あぁ、もうこれで保健室には来れなくなる..」と思いました。

しかし先生はわたしのおでこにスッと手を当てて、「あら、そうね、ちょっと熱っぽいわね」と言って、ベッドに横になるよう促してくれました。

わたしは何かわからないけど、ベッドに入って布団を頭まですっぽり被って、そのあと声を殺して泣きました。なぜ涙が出るのだろう。わからないけど、先生はわたしがウソをついていることも含めて、ぜんぶ許してくれるんだなぁ..と思ったのです。うれしかったし、そんな大人がいるんだなと、なんだかありがたく思いました。先生は何も言わないし何も聞かないので、助かったなという反面どこかこのままじゃいけないような、恥ずかしいような気持ちにもなりました。

1時間ほどして布団から出ると、先生はまた「うんうん」と言いながら、「お大事に」と送り出してくれました。わたしは、この人はわたしが何を考えているのか、何に悩んでいるのかなんて不躾に聞かないんだなと思いました。でも、もしわたしが話せば、聞いてくれるんだろうな。きっと親身になって聞いてくれるんだろうな。もし、話をするのなら「この人だな」とも思いました。

こんな不甲斐無いわたしをまるごと認めてくれて、子ども扱いせず応援してくれた大人は、この人が初めてだったと記憶しています。そして、わたしの保健室サボタージュはその日が最後になりました。

その先生が誰だったのか、名前も何も全然覚えていなくて、なんだか現実にあの人いたのかしら?とさえ思ってしまいます。でも、自分が大人になったとき、そんな場所があったらいいなとぼんやり思ったのです。人の人生にさりげなく関わって、それでスッと忘れられる..風のような人でした。​

三十八花堂はみなさまの人生に時々寄り添って、いつの間にか忘れられる... ささやかな風のような存在でありたいと願っています。


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